運用を行っていると、「いい銘柄を買っているはずなのに、なぜかうまくいかない」そんな局面によく遭遇します。いいところで買えたと思ったのに、買った直後から下落。ロスカットラインに近づいても「この銘柄は強いはずだ」という気持ちが邪魔をして、結局さらに大きな下落に巻き込まれてしまう。トレンドに乗れているはずなのに、気づけば自分だけが傷口を広げている。このような経験、あるのではないでしょうか。当然、私自身も何度も経験しています。そして今でも、同じような状況に陥ることがあります。

うまくいかない時、私は必ず「立ち止まる」

この「何かおかしいな」と感じたとき、私は必ず一度、立ち止まることにしています。これは、自分の呼吸と市場の呼吸がズレているサインだと考えているからです。このズレの正体は、ほとんどの場合、自分の規律の緩みにあります。本来の勝ちパターンの条件にすべて当てはまっていないにもかかわらず、「いくつか条件を満たしているから、まあ大丈夫だろう」と、自分に都合のいい判断をしてしまう。この“わずかな緩み”がズレを生みます。

海で浮き輪を使って泳いでいると、気づいたときには思っていた場所から大きく流されていることがあります。これと同じです。規律を守っているつもりでも、無意識のうちに、自分の円の外に出てしまっている。特に「トレンドに乗らなければ」という意識が強い時ほど、このズレは起きやすくなります。

取引を振り返ると、必ず答えがある

直近のトレードを振り返ると、多くの場合「ああ、やっぱりここを見ていなかったな」というポイントが見つかります。これは、投資手法が悪いわけでも、判断力が足りないわけでもありません。単に、自分のルールの範囲内で取引していなかっただけです。一度立ち止まり、そこに気づくことで、リセットがかかります。

それでも、うまくいかない時に起きていること

過去の失敗を振り返り「次はここに注意しよう」と修正して取引を行った。それなのに、それでもうまくいかない。この現象を、私は「部分修正の罠」と呼んでいます。これは、過去の相場環境を前提に、今の相場を見てしまうことによって起こります。相場環境は常に変化しています。にもかかわらず、過去の成功・失敗パターンを基準に修正すると、そこにズレが生じ、修正が機能しなくなるのです。

戦略を一度、白紙に戻す

このような状況に陥った時は、今の投資戦略と相場の流れが噛み合っていないサインと捉えています。そのため私は、部分修正ではなく、一度オールリセットを行います。戦略を白紙に戻し、今の相場環境を前提に、一から組み立て直します。投資の世界でコントロールできるのは、自分自身だけです。相場の動きは、誰にもコントロールできません。

波に乗れないときは、一度、海から上がる

波にうまく乗れていないと感じた時は、無理に泳ぎ続けるのではなく、一度、海から上がり、シャワーを浴びる。私にとってこれは、冷静さを取り戻すための合図です。この考え方を徹底するようになってから、運用は大きく安定しました。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細