相場を見ていると、上がったり下がったりと、方向性がはっきりしない局面に直面することがあります。このような場面で起きやすいのが、私が「判断の掛け違い」と呼んでいる現象です。これは、ボタンの掛け違いと同じで、最初の判断が少しずれることで、その後の行動すべてが噛み合わなくなってしまう状態を指しています。

掛け違いが起きる典型的な流れ

相場の方向性が見えないにもかかわらず、何らかの行動を取ってしまう。このとき、不安になって売却し、すぐに相場が反発して先日の売却は間違えと考え買い直し、その後再び下落する、という流れに陥ることがあります。結果として、判断そのものは間違っていないはずなのに、成果だけが大きく崩れてしまいます。一方で、下落した場面で買い、反発したところで売却し、その後の下落をやり過ごす、というように、判断のタイミングがわずかに違うだけで、結果が正反対になることもあります。

原因は分析ではなく焦り

ここで重要なのは、この失敗が「分析方法の誤り」から生まれているわけではない、という点です。多くの場合、原因は「何か行動を取らなければいけない」という心の焦りにあります。相場が動いていないときほど、何もしないことに不安を感じやすくなります。その焦りが、判断のタイミングをわずかにずらし、結果として掛け違いを生んでしまいます。

この焦りは、外部からの情報によって強められることがあります。相場観や見通しが一方向に偏った情報に触れ続けることで、自分の判断軸が静かに揺らいでいく。情報そのものが悪いわけではありませんが、受け取り方次第で、判断を急がせる要因になることは少なくありません。

試されるのは忍耐力

相場の方向性が見えないときに試されるのは、新しい手法や鋭い予測ではありません。無理に動かないという忍耐力です。自分が理解できる範囲、自分の円の中に留まり、不要な行動を取らない。それは地味ですが、資産を守るうえで非常に重要な判断です。相場に勝とうとする前に、まずは自分の資産を守ること。判断の掛け違いを避けるための、基本的な考え方だと私は考えています。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細