ひとつの投資において、みなさんはどの程度の損失までを受け入れていますでしょうか。「ロスカットのない運用は、ブレーキのない車を運転しているのと同じだ」とよく言われます。それほど、損失管理は運用の根幹にあたる部分です。

損失許容率という考え方

運用の世界には、損失許容率という考え方があります。これは、運用資産全体に対して、ひとつの取引で何%までの損失を許容するかという基準です。例えば、運用資産が1,000万円あると仮定し、ある取引で20万円の損失を出したとすると、損失許容率2%を使ったことになります。

1%前後を守る意味

結論から言うと、損失許容率2%は一般的には高い水準と考えられます。多くの運用では、1%〜1.5%程度に抑えることが多いです。仮に損失許容率1%で10回連続して取引に失敗した場合、資産の減少は約10%。1.5%であれば約15%です。この範囲であれば、致命的なダメージを受けることはありません。逆に言えば、1%前後を守っている限り、運用で大きく失敗する可能性は極めて低いとも言えます。

投資額とリターンの関係

ただここで、多くの投資家が疑問を持ちます。損失許容率を1%に設定した場合、1回の取引で許容できる損失は10万円です。100万円投資すれば10%の損失、200万円投資すれば5%の損失、という設計になります。そう考えると、仮に10%、20%上がったとしても投資額が小さいため、リターンが大きくならないのではないかと感じてしまうのも自然なことです。

選択と集中という考え方

ただし、実際は少し違います。この運用は最初から全力で張る前提ではないからです。重要なのは、選択と集中という考え方です。機関投資家も、最初から大きなポジションを持つことはほとんどありません。まずは小さく入り、相場の流れが確認できた段階で、段階的にポジションを増やしていきます。損失を限定的に抑えながら、流れが合ったときだけ少しずつポジションを積み上げていく。雪だるまを転がしながら育てていくイメージに近いですね。これが、損失を抑えながらリターンを安定させるひとつのコツです。

運用は、リターンから考えるのではなく、リスクから考え始めることで、一気に安定度が増します。「もしここで買って、ここで売れば〇〇万円の利益が取れる」という入り口か、「もしここで買えば、ここまでのリスクなら受け入れられる」という入り口か。どちらの運用が安定しているかは、容易に想像できます。リターンは、リスクをベースに考えるものです。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細