相場に関わる仕事をしていると言うと、よくこう聞かれます。「これから相場は上がりますか」「次は何を買えばいいですか」このような質問を受けたとき、私はきちんと答えません。なぜなら、その答えが、多くの投資家の判断を弱くしてきた場面を、何度も見てきたからです。相場予想をすること自体が、間違っているとは思っていません。ただ、相場の動きには、どれだけ分析しても、人の力では制御できない部分が必ず残ります。その前提を理解しないまま予想に依存すると、思い込みは運用のディフェンス部分を必ず脆弱にします。だからこそ、相場予想以上に必要なのが、規律(ルール)の設定です。事前準備が、すべてということです。

予想が外れたときに生まれるもの

相場予想が当たるか外れたかを重要視する投資家は、どうしても短期的な利益を求めがちになります。私は、そのような投資家の光景を、現場で何度も見てきました。予想が外れた時、多くの人は「想定外だった」「こんなはずじゃなかった」と言います。この言葉から生まれるのは後悔だけです。そして、後悔からは何も生まれません。

自分の円の中での取引

17年間、現場で多くの投資家と向き合ってきて、はっきりと分かったことがあります。大きな失敗は、分析不足ではなく、判断の準備不足から起きるということです。後悔のない投資とは、自分の中で納得のいく範囲内で投資を行うことだと考えています。これを私は「自分の円の中での取引」と呼んでいます。円の中での失敗は、納得のある失敗であり、必ず次に繋がります。相場予想という強い思い込みが頭を支配すると、スタートは円の中にいても、気付けば円の外に出てしまうことがあります。相場予想は、自分の円の外へ、簡単にラインを越えてしまう。

私は、相場を当てる人ではなく、相場の中で生き残る人を増やしたい。だから、相場予想はしない。ただただ、自分にとって優位性のある判断を、淡々と行っています。もしあなたが、自分の判断が揺れていると感じたなら、その感情は、自分が円の外に近づいていることを知らせるサインかもしれません。後悔のない判断とは、未来を当てることではなく、その時点の自分が納得できる判断を、積み重ねていくことだと考えています。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細