かつて私は「いずれ大きな調整が入る」と予想していました。株価は上がり続けていましたが、上がれば上がるほど「これは行き過ぎだ」という思いが強くなりました。そして私は、その予想を肯定する材料を探し始めます。割高論、過去の暴落事例、専門家の慎重なコメント。気付けば、相場そのものではなく、自分の予想を守ることに集中していました。やがて実際に下落が起きます。「やはり正しかった」そう感じた瞬間、強い自己肯定感が生まれました。しかし、パフォーマンスは伴いませんでした。
予想と願望の境界線
なぜか。予想が、いつの間にか願望に変わっていたからです。予想は仮説です。外れても問題はありません。しかし願望は違います。「こうあってほしい」「やはり自分は正しいはずだ」その感情が入った瞬間、判断の質は確実に落ちます。
願望の補強という罠
別の例もあります。保有株が下落し、損切りラインに到達しました。本来ならロスカットです。しかし「この会社は戻るはずだ」「この下げは一時的だ」そう思い始めます。そして、自分と同じ意見をSNSやアナリストの評価に探しにいきます。これは分析ではなく、願望の補強です。願望が入り込んでいるとき、頭の中では「ここから一気に反発する」「次は長い陽線が出る」といった、まだ起きていない未来を、あたかも確定しているかのように描いてしまいます。この瞬間、判断は願望に支配されています。願望は甘い感情です。自分を守ってくれる、正しさを保証してくれる。だからこそ厄介です。願望が入り込むと、ロスカットが遅れ、ポジションが偏り、リスクを過小評価する。結果として、パフォーマンスは静かに崩れていきます。
願望を管理するということ
私はこのことに気付いてから、自分の「願望」を管理するようになりました。その方法は単純です。判断をする前に、自分に問いかけます。「これは仮説か、願望か」もしそこに"こうなってほしい"という感情が混ざっていると感じたら、一度立ち止まります。予想が外れることは問題ではありません。願望に気付かないことが問題です。運用とは、相場との戦いではなく、自分の感情との戦いでもあります。願望を管理できるようになってから、私のパフォーマンスは安定し始めました。それは、当たる回数が増えたからではなく、判断の質が崩れにくくなったからです。
