「様子を見ておこう」そう判断してウォッチしていた銘柄が、気づけばズルズルと上昇し、高値を更新していた。あるいは、様子見をしていたら下落が止まらず、結果的に大きな損失にまで膨らんでしまった。このような経験、あるのではないでしょうか。私自身、いくらでもあります。長年運用をしていて思うことですが、様子見という判断は、実は非常に重要です。むしろ、様子見が上手な人ほど、成果は安定しやすい。そう言っても過言ではありません。

結果論ではなく過程を振り返る

様子見をした結果、株価が高値を更新してしまうと「チャンスを逃した」そんな後悔が生まれやすくなります。ただ、ここで注意が必要です。運用の世界において、結果論ほど役に立たないものはありません。大事なのは、その判断に至った過程です。「買えなかった」のは結果論。「様子を見ると判断した」のが過程です。様子見という判断を磨くためには、この過程を振り返る必要があります。

想定と願望の違い

よくある失敗のひとつに、株価の動きに"願望"を持って様子見をしてしまうというケースがあります。例えば、株価が下落し「ここで買おう」と考えていた水準に近づいたとします。すると「想定通り下がってきたけど、もう少し下がりそうだ」と判断を先延ばしにしてしまう。これは、想定ではなく、願望で株価を見始めている状態です。

ここは非常に誤解されやすい部分です。想定とは、自分が許容できる範囲をあらかじめ決めたもの。願望とは、そうなってほしいという期待。この2つは、似ているようでまったく異なります。決定的な違いは、想定に基づく判断は後から修正できるという点です。結果がどうであれ、次に活かす材料になります。一方で、願望による判断からは何も残りません。残るのは「期待しすぎた」という後悔だけです。

想定内か想定外かだけを考える

私自身の経験から言えるのは、願望による判断で、うまくいったことは一度もないということです。だから私は、様子見という判断をするとき、「今の動きは、自分の想定内なのか、想定外なのか」とだけ考えるようにしています。想定外であれば、その先の判断には願望が入り込む可能性が高くなります。私の場合、想定内か想定外かを判断する際は、ノイズが比較的少ない「朝」の時間帯に、まず大筋の判断を行うようにしています。時間の経過とともにノイズが入りやすい環境になり、情報に意識が引っ張られ、感情が混ざりやすくなるためです。

このように考えると、様子見という判断は、決して消極的なものではありません。むしろ、自分の判断の質を確認するための、非常に重要なプロセスです。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細