投資の判断に迷ったとき、本当に中立な立場で話を聞いてくれる人がどこにいるのかわからない。私が投資顧問になったのは、その場所を作りたかったからです。

とある日の新幹線の中でのことでした。移動中、窓の外の景色を眺めながら、当時勤めていた証券会社での仕事を思い返していました。「お客様にとって、低コストで、なおかつ質の高い運用サービスはないのだろうか」。特に結論もなく考えていたとき、突然、頭の中にアイデアが浮かびました。新幹線を降りるとそのままコンビニに入り、ノートとボールペンを買い、思いついたビジネスモデルを勢いのまま書き留めたのを覚えています。

17年間感じていた、構造への違和感

当時から、私の中には一つの強い違和感がありました。安定的な運用を行うためには、たとえ保有期間が短くても、相場環境が変わったのであれば損切りという判断は必ず必要になります。理屈としては当たり前のことです。

しかし証券会社は、売買のたびに手数料をいただくビジネスモデルであるため、保有期間の短い売買は「回転売買」と受け取られかねません。つまり、環境が明らかに悪化しそうでも、売却提案がしづらい構造があるのです。販売手数料の高い投資信託では、なおさらその判断は難しくなります。

投資信託は長期投資を前提とした商品で、短期的な視点での売買は基本的に推奨されません。ただし長期投資であっても、商品選択を誤れば相場環境によって大きく評価を損なうことがあります。テーマ性の強い投資信託ほど値動きが荒くなるのは、その典型です。相場環境は日々少しずつ変化し、その積み重ねであるとき大きな流れが変わる。その変化に対し「長期だから」という理由だけで対応が遅れてしまうことに、私はずっと限界を感じていました。

たどり着いた「理想的な運用モデル」

そこで考えたのが、運用コストの安い金融機関をお客様自身に選んでいただき、そこに対して私がアドバイスを行うという形です。売買手数料に縛られない。環境変化に応じた判断ができる。評価管理やインフラは金融機関が担う。これなら低コストでありながら、本当に必要な判断だけを提供できる。これが私にとっての理想的な運用モデルでした。

調べていく中で、投資アドバイスに対して報酬をいただくには財務局への投資助言業登録が必要だと知りました。こうして、ふと思いついた構想をきっかけに、私は投資顧問という道を選びました。

独立して見えた景色

実際に投資顧問となってみると、見える景色は証券会社時代とはまったく違いました。証券会社では、商品をわかりやすく伝え販売する提案力が求められます。一方、投資助言業では運用そのものの専門性が問われます。お客様が満足しなければ顧問契約はいつでも解除される。非常にシビアな世界です。

さらに、ネームバリューも実績もない状態からのスタートでした。事務所を借りるにも信用力がなく、何度も審査に落ちました。社会は信用がすべて。そう痛感しながらのスタートでした。だからこそ、誇張も煽りもできません。運用の考え方、捉え方、取り組み方。クオリティで勝負するしかない。失敗を重ねながら試行錯誤を続け、今の考え方に至っています。

私がお伝えしているのは「当て方」ではない

私が投資顧問としてお伝えしているのは、株価の当て方ではありません。相場環境が変わったときに、どう判断し、どう行動し、どうリスクと向き合うのか。その考え方をできるだけ誠実に言語化することです。

投資顧問という仕事を選んだ理由は、特別な成功体験があったからではありません。むしろ、うまくいかない場面や迷い続けた時間の方が多かった。その中で「これは違う」と感じたことを一つずつ手放し、今の考え方にたどり着きました。合うかどうかは、読んでくださった方に委ねたいと思います。

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代表取締役 下田祐樹
下田 祐樹(株式会社TODOKERU 代表取締役)
野村證券にて17年間、個人・法人の資産管理業務に従事した後、投資助言・代理業として独立。関東財務局長(金商)第3348号。著書『運用者の規律』ほか。プロフィール詳細